消化器内科の患者で最も多いのは、がんで治療を受けている人です。進行性の早いこの病気は、医師はもちろん看護師も非常に高度な観察眼と知識が豊富でなくてはなりません。看護師の中でも、患者の検査結果とその後看護をどうつなげたらいいかわからないと思う人が多いようです。事例を挙げて、どのように看護するべきかを説明します。

S字結腸と肝臓への転移が見つかった65歳の男性の場合のお話です。食欲不振や、排便後すっきりしないという症状がでていたものの、黄疸が出始めたのでここでやっと来院しています。すでに転移もあり、即入院しましたが自分の体の状況をあまりよくわかっておらず、現実を受け入れられません。

ご家族との話し合いで手術はせずに、症状緩和のための治療を行いました。しかし、その年の2月に症状は緩和し、退院しましたが3か月後には亡くなった、というケースです。すでに、尿検査や血液検査で貧血と黄疸という症状が出ていたことでがんによる症状であるだろうと推測されます。貧血と黄疸を緩和するために投薬を行うと、がん細胞の進行を促してしまう場合があり、副作用で激しい痛みや倦怠感、めまいなどが起こることもあるようです。これらを、科学療法ではなく緩和ケアでの治療を施す、そのためには何が必要か、を考えるのです。この時は、黄疸による体のかゆみを蒸しタオルで包むことで痒みを抑えるという処置を行いました。

また貧血は、がん細胞が体内にいる以上、出血は免れないので献血を行いました。このような処方の指示は担当医がします。しかし、食事指導や患者へ介助するのは看護師です。このような事例を繰り返して経験を得ていきます。